タヌキは とてもわるいタヌキで、 おじいさんが 畑で 働いていますと、
「やーい、 ヨボヨボじじい。 ヨボヨボじじい」と、 悪口を 言い、 夜に なると、 おじいさんの 畑から イモを 盗んでいきます。
おじいさんは、 タヌキの いたずらに 我慢できなくなり、 畑に ワナを しかけて タヌキを つかまえました。
そして、 タヌキを 家の 天井に 吊るすと、 そのまま 畑仕事に でかけました。
おじいさんが いなくなると、 タヌキは やさしい おばあさんに 言いました。
「おばあさん、 私は 反省 しています。 もう わるいことは しません。 つぐないに、 おばあさんの かたを もんで あげましょうか?」
「だめだよ。 そんなことを いって、 逃げる つもりじゃあ ないのかい?」
「では、 タヌキひでんの、 饅頭を 作ってあげましょう。 とっても おいしいので、 おじいさんが 喜びますよ。 もちろん、 作り終わったら、 また、 天井に 吊るしても かまいません」
そういうので、 おばあさんは タヌキの なわを 解いて やりました。
そのとたん、 タヌキは おばあさんに おそいかかり、 そばにあった ぼうで おばあさんを なぐりころすと、
「やーい バカな ババアめ、 タヌキを 信じるなんて」
と、 言って、 うら山に 逃げて 行きました。
しばらくして 帰ってきた おじいさんは、 倒れている おばあさんを 見て ビックリ。
オイオイと 鳴いていますと、 心優しい ウサギが やってきました。
「おじいさん、 どうしたのです?」
「じつは タヌキの やつが、 ばあさんを こんなにして、 逃げてしまった」
「あの わるいタヌキですね。 おじいさん、 わたしが おばあさんの かたきを とってあげます」
ウサギは タヌキを やっつける方法を 考えると、 タヌキを しばかりに 誘いました。
しばかりの 帰り道、 ウサギは 火打石で 『カチカチ』と、 タヌキの 柴に 火を つけました。
「おや? ウサギさん、 今の、 『カチカチ』と いう音は なんだい?」
「この山は カチカチ山さ。 だから カチカチと いうのさ」
「ふーん」
しばらくすると、 タヌキの 柴が、 『ボウボウ』と 燃えはじめました。
「おや? ウサギさん、 この 『ボウボウ』と いう音は なんだい?」
「この山は ボウボウ山さ、 だから 『ボウボウ』と いうのさ」
「ふーん」
そのうちに、 タヌキの 背負った 柴は、 大きく 燃えだしました。
「なんだか、 あついな。 ・・・あつい、 あつい、 助けてくれー!」
タヌキは 背中に、 ひどい やけどを おいました。
つぎの日、 ウサギは 唐辛子を 練って作った 塗り薬を持って、 タヌキの所へ 行きました。
「タヌキくん、 やけどの 薬を もってきたよ」
「これは ありがたい。 背中が 痛くて たまらないんだ。 早く 塗っておくれ」
ウサギは タヌキの 背中の やけどに、 唐辛子の 塗り薬を 塗りました。
「うわーっ! いたい、 いたい! この薬は とっても いたいよ!」
「我慢しなよ。 よくきく 薬は 痛いもんだ」
そういって、 もっと 塗りつけました。
しばらくして、 タヌキの 背中が 治ったので、 ウサギは タヌキを つりに さそいました。
「タヌキくん、 船を 作ったから、 海へ つりに 行こう」
「それは いいな。 よし、 行こう」
海に 行きますと、 2せきの 船が ありました。
「タヌキくん、 ぼくは 白いから、 この 白いふね。 きみは 茶色いから、 こっちの 船だよ」
ウサギは、 木で 作った 白い船に 乗りました。
タヌキは、 泥で 作った 茶色い船に 乗りました。
2せきの 船は、 どんどんと 沖へ 行きました。
「タヌキくん、 どうだい、 その船の 乗りごこちは?」
「うん、 いいよ。 ウサギさん、 船を 作ってくれて ありがとう。 ・・・あれ、 なんだか 水が 染み込んで きたぞ」
泥で 出来た 船が、 だんだん 水に 溶けて きたのです。
「うわーっ、 助けてくれ! 船が 溶けていく!」
大慌ての タヌキに、 ウサギが 言いました。
「ざまあみろ、 おばあさんを 殺した バツだ」
タヌキの 泥船は 水に ぜんぶ溶けてしまい、 タヌキは そのまま 海のそこに 沈んでいきました。
こうして ウサギは、 見事に おばあさんの かたきを とったのです。